Oculus Quest 2がVRの市場を変えた!? 1億円以上の収益を上げたタイトルは60本以上に –

VRはビジネスになる!

 2020年のVR業界でもっとも注目を集めたトピックと言えば、Oculus Quest 2のローンチになるのは間違いないだろう。“完全ワイヤレスオールインワンVRヘッドセット”と銘打たれて2020年10月13日にリリースされたOculus Quest 2は、端末さえあればスタンドアローンで利用できるという利便性の高さや、従来までのVRヘッドセットと比較してリーズナブルな価格で購入できるという敷居の低さなどが相まって、大きな注目を集めた。Oculus Questが初めて日本で本格的に発売ということもあり、興味を惹かれた方も多かったのではないだろうか。

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 そんなOculus Quest 2のローンチから3ヵ月余りを経て、Facebook本社がコンテンツの売れ行きの動向を開示。それに合わせてFacebook Reality Labs コンテンツエコシステム ディレクターのクリス・プルエット氏によるプレゼンテーションの機会が設けられた。クリス氏のお話のテーマは、ずばり“Oculus Storeで成功している開発者について”。端的に言うと、“いかにVRプラットフォームが開発者にとってビジネスとして成立するようになったか”をアピールするものだ。クリス氏は「VRの“エコシステム”がとんでもないスピードで広がっている」という。

 この場合の“エコシステム”について少し説明しよう。これはどのプラットフォームにも当てはまることではあるが、どれだけ端末の性能がすぐれていても、おもしろいコンテンツがないと商品として手にとってはもらえない。“性能のいいデバイス→魅力的なコンテンツ”という、“エコシステム”を築くことがデバイスの普及には不可欠だ。Facebookでは、VRに取り組むようになってから、その“エコシステム”の構築に力を入れており、「VRを成功させたいのであれば、開発者にも成功してもらわないとならない」(クリス氏)というのは、一貫した命題としてあったようだ。

 ただし、「もともとVRは成功できるものなのか、ゲーム業界の開発者の中でも疑問視する開発者も多かった」とクリス氏は率直に語る。VRヘッドセットに関しては、ゲーム機などと比べたら、まだまだそこまでインストールベースが大きくないというのが、おもな理由だ。

 今回のプレゼンで明らかにされたのは、Oculus Quest 2などの登場により、いかにVRの市場が拡大しているかということ。クリス氏の堪能な日本語による率直な物言いに便乗して、端的に意訳してしまうと、「VRはビジネスになりますよ!」ということだ。

 で、どのくらいのビジネス規模かということで、Oculus Quest 2の販売台数だったり、ソフトのセールス本数などを開示しているとわかりやすいのだが、残念ながらそのへんは非公開。その変わりに明らかにされているのが、“どれだけ利益を上げているか”。Facebookがひとつの基準として設定しているのが100万ドル(日本円でおおざっぱにわかりやすくいうと、1億円)で、2020年9月に行われたFacebook Connectでは、1億円以上の利益が出たのが35タイトルだったのに対して、2021年2月時点では60タイトルを超えているという。つまり、Oculus Quest 2のローンチ以降3ヵ月で、それまでの倍以上のタイトルが1億円の収益を上げたというわけだ。60タイトルはOculus Storeのタイトル中3分の1となる。さらには、10億円以上の利益を上げているタイトルも6タイトルあるという。

 クリス氏の「結論から言うと、Oculus Quest 2のエコシステムが爆発的に広がっているということです。開発者がそれで自分のビジネスを作っていけるんです」という誇らしげな口吻も無理からぬものがあると言える。

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 さらに注目すべきは、大規模なプロジェクトはもちろんのこと、小規模の開発チームも成功しているということ。10億円以上の利益を上げているタイトルとして『Beat Saber』や『ポピュレーション: ワン』を挙げたクリス氏が、小規模開発のヒット作として紹介したのが、『Onward』。サバイバルFPSの『Onward』は、もともとひとりのクリエイターが「このゲームを作りたい!」との思いのもとに開発したタイトルで、2020年7月にOculus Quest向けにリリースするや配信4日間で1億円の利益を上げ、現在は10億円を超えているという。『Onward』は、Oculus Quest 2以前からのトレンドと言えるが、“小規模開発VRタイトルの成功例”の1作と言える(『Onward』は残念ながら現時点では日本語対応はしていない模様)。

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『Onward』Oculus Storeページ

 では、日本のタイトルはどうか? Oculus Quest 2のローンチに合わせて、日本発のタイトルが複数リリースされたことはご存じの通り。それらのタイトルは、“日本での成功には日本のコンテンツが必要”だと判断したFacebookが、複数の開発者とパートナーシップを結んだ成果とも言うべきものだが、「正直、それらのコンテンツは大成功しています」とクリス氏。日本人は海外産のゲームもよく遊ぶが、とくに、「日本で作られたコンテンツが、日本のユーザーに熱烈に支持されているのは顕著」だと改めて認識したという。

 ちなみにクリス氏は日本人開発者との付き合いが長いらしいが、「日本人の開発者からは、海外からは生まれることがないようなタイトルが作られることが多いんです。それが、日本人のお客さんだけではなくて、グローバルなお客さんにも価値があります」(クリス氏)と、日本市場だけではなく、海外ユーザーへの訴求も期待しているようだ。

 クリス氏がグローバルで成功した例として挙げるのが水口哲也氏の『テトリス エフェクト』で、同作も1億円以上の収益を上げているそうだ。

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『テトリス エフェクト』Oculus Storeページ

 そんな動向を受けて、「日本のクリエイターも、VRをやってみたいという声が増えているのではありませんか?」と記者が水を向けてみると、やはり「じつはたくさんあります」とクリス氏。先述の通り、日本人開発者とのお付き合いが長いクリス氏だが、「最近になって声をかけていただくことも増えましたし、実際にタイトルを控えている開発者もいます。いずれにせよ、日本のクリエイターさんからたくさんの興味を持っていただいています」という。

 これだけ話題になれば、それは興味を持つ開発者も増えるだろうなあ……という感じだが、これからVRゲームが雨後の筍のようにどんどん出てくるかというと、どうやらそうでもないようだ。「VRゲームは、家庭用ゲーム機などと似ているところがありまして、開発期間が短くはないんです。ある程度大きな規模のゲームを開発していくのであれば、1年以上、2~3年かかる場合もあります。ゲームが複雑になるほど、当然開発期間が長くなるので、Oculus Quest 2でVRに興味を持ってくれた開発者が、これから開発を始めたとしても今年リリースするのはさすがに難しいと思っています。いまリリースしているタイトルは2~3年前くらいから開発がスタートしていますし」(クリス氏)との率直なお言葉。まあ、やはりローマは1日にして成らずといったところだろうか。

 また、「人気が出るゲームの傾向は?」との記者からの質問に対する答えも興味深かった。「私のチームは第三者サポートという立場で取り組んでいるのですが、開発者さんにお声かけするときは、VRに合うゲーム、もしくはVR専用に開発されるゲームがいちばんお客さんに支持されるということは伝えています」というのだ。つまり、人気が出るのは、VR向けに最適化されたゲームということだ。

 そのデバイスの魅力を最大限に活かしたコンテンツが、いちばん深い体験をもたらすというのは、納得のいくところで、クリス氏が “VRでの深化した体験”の適齢として挙げたのが水口哲也氏の『Rez Infinite』。言うまでもなく、同作のベースとなったのは、もともと家庭用ゲーム機向けに開発された『Rez』だが、「VRでプレイするとものすごく経験が深まる。『Rez Infinite』はもともとVR専用に作られたものではないかというくらいクオリティーが高いです」という。

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『Rez Infinite』Oculus Storeページ

 さらに言えば、クリス氏のお話を聞いていると、VRに適正のある開発者というのは存在するようだ。クリス氏によると、「この開発者ならば、VR専用コンテンツを作るのがうまいのではないか」との判断から声をかけたケースもあるという。あまたの高橋宏典氏はそのひとり。あまたと言えばVRタイトルの『Last Labyrinth』がおなじみだが、「VRに向いた開発者だと思うので、付き合いたかったんです」(クリス氏)とのことだ。“VRに向いた開発者”とはどんな属性なのか気になるところだが、それはまた別の機会にでも……。

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『Last Labyrinth』Oculus Storeページ

 一方で、クリス氏の口からは、Oculus Quest 2の利用者の興味深い動向も聞かれた。もともとOculus Quest 2は、“VRゲーム機”という形で訴求しているが、「ゲームが好きなユーザーが、ほかのアプリにも興味を持ってくれている」というのだ。とくに成功しているのがフィットネス関係。「たとえば、『Beat Saber』はフィットネスのために作られたゲームではないのですが、“『Beat Saber』で痩せました”というお客さんはけっこういます」(クリス氏)という。フィットネスアプリはとくに女性に人気のよう。

 そのほか、Oculusテレビなどの動画関係も人気のようだ。VRゲーム機としてOculus Quest 2を購入したユーザーが、非ゲームにも興味を持つ。これもひとつの“エコシステム”と言えるだろう。

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『Beat Saber』Oculus Storeページ

 さて、「Oculus Quest 2は数ヵ月前に発売されたばかりで、まだまだこれからだと思っています」というクリス氏。日本でのOculus Quest 2は、目標以上の成果を挙げており、この結果には満足しているそうだが、まだまださらに上を期待しているとのこと。そのためにも、今後も積極的なプロモーション展開を継続し、さらなるエコシステムの構築に力を注ぐという。

 何よりも、このエコシステム、ユーザーにとっても大いに歓迎すべきことではある。“性能のいいデバイス→魅力的なコンテンツ”の先には、「いままでなかったようなソフトがこれから出てくることが可能になる」(クリス氏)へとつながっていくわけで、それだけおもしろいゲームに触れられる機会が増えるからだ。まさにこれこそ、良好なエコシステムの循環と言える。

 今後のラインアップについては、「年末までにリリース予定のタイトルは、だいたい決まっています。どのようなタイトルを予定しているか、話したくてうずうずしています(笑)」とのことで、まずは、Oculus Quest 2の2021年のラインアップに期待したい。

クリス・プルエット氏

Oculus Quest 2がVRの市場を変えた!? 1億円以上の収益を上げたタイトルは60本以上に

Facebook Reality Labs
コンテンツエコシステム ディレクター
 ゲーム業界で豊富な経験を持ち、PC、コンソール、携帯電話、VR向けゲームを開発。ゲームスタジオ「Robot Invader」を設立し、プログラミングやゲームプランニングを手がけ、20タイトル以上のゲームの立ち上げなどに携わる。また、ホラーゲームに精通しており、それに関する記事の執筆や、自身でも@c_pruettというアカウント名で活躍している。
 現在はFacebook Reality Labsにてコンテンツエコシステムディレクターを担当。流暢な日本語を活かし、日本の利用者に製品の魅力やコンテンツの面白さを伝えるコンテンツ・スポークスパーソンとしても活躍する。

※公式プロフィールからの抜粋

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